企業の明暗を分けるクライシスマネジメント|不祥事対応の4フェーズを徹底解説
お役立ち記事一覧に戻る企業の不祥事や情報漏洩といった危機は、いついかなる企業にも起こり得るものです。ひとたび発生すれば、事業の存続すら脅かしかねません。こうした緊急事態において、被害を最小限に食い止め、企業の信頼を回復するために不可欠な活動が「クライシスマネジメント」です。しかし、具体的に何を、どのような順序で進めるべきか、平時から明確に準備できている企業は多くありません。
本記事では、企業の経営層や法務・広報担当者の皆様に向けて、クライシスマネジメントの基本から、不祥事発生後の具体的な対応フロー、そして実効性のある再発防止策までを網羅的に解説します。特に、混同されがちな「リスクマネジメント」との違いを明確にし、有事の際に取るべき行動をフェーズごとに分解して具体的に示します。法的義務と社会的責任の両方を果たし、危機を乗り越えるための羅針盤としてご活用ください。
本稿は一般的な情報提供を目的としており、個別具体的な事案に対する法的助言ではありません。実際の対応にあたっては、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。
クライシスマネジメントを正しく理解するためには、類似する用語との違いを把握することが第一歩です。特に「リスクマネジメント」と「BCP(事業継続計画)」は混同されやすいため、それぞれの目的と活動のタイミングを整理しましょう。
クライシスマネジメント、リスクマネジメント、BCP…どれも「危機への備え」という点では似ているけど、具体的に何が違うのか、どう使い分けるのかがよく分からないな。
Contents
- 0.1 1-1. クライシスマネジメント:発生後の「事後対応」
- 0.2 1-2. リスクマネジメント:発生前の「事前予防」
- 0.3 1-3. BCP(事業継続計画):災害時の「事業復旧」
- 0.4 1-4. 違いのまとめと両輪で取り組む重要性
- 1 【有事の行動指針】不祥事発生後のクライシスマネジメント対応フロー
- 2 本記事適用上の重要な原則
- 3 【フェーズ1】初動対応で企業の明暗を分ける5つのステップ
- 4 【フェーズ2】事実調査で遵守すべき法的義務と注意点
- 5 【フェーズ3】情報開示・記者会見を失敗させないためのポイント
- 6 【フェーズ4】実効性のある再発防止策の策定と運用
- 7 まとめ:平時からの備えがクライシスを乗り越える鍵となる
- 8 クライシスマネジメントに関するQ&A
1-1. クライシスマネジメント:発生後の「事後対応」
クライシスマネジメントとは、不祥事・事故・災害といった危機(クライシス)が現実に発生した後の対応活動を指します。その主な目的は以下の通りです。
- 被害の拡大防止
- 事業への影響の最小化
- ステークホルダー(顧客、取引先、株主、従業員など)への適切な情報開示
- 企業の社会的信頼の回復
- 原因究明と再発防止策の策定
つまり、火事が起きてしまった後に、いかに迅速に消火し、被害を抑え、安全を確保し、二度と火事を起こさないように対策するか、という「事後対応」のプロセス全体がクライシスマネジメントです。
1-2. リスクマネジメント:発生前の「事前予防」
一方、リスクマネジメントは、危機が発生する前の段階で行われる「事前予防」の活動です。自社にどのようなリスクが存在するかを事前に洗い出し、評価・分析した上で、その発生を未然に防いだり、発生した場合の影響を軽減したりするための対策を講じます。
- 社内規程やマニュアルの整備
- 従業員へのコンプライアンス研修の実施
- 情報セキュリティシステムの強化
- 内部監査の実施
火事の例で言えば、火災報知器を設置したり、燃えやすいものを置かないようにしたり、避難訓練を実施したりといった「予防策」がリスクマネジメントにあたります。
1-3. BCP(事業継続計画):災害時の「事業復旧」
BCP(Business Continuity Plan)は、大規模な自然災害やシステム障害などにより、事業の継続が困難になった際に、中核事業を中断させず、または可能な限り短時間で復旧させるための計画です。
- バックアップ拠点の確保
- 代替生産・供給手段の準備
- 従業員の安否確認システムの導入
- 重要データのバックアップ
火事で社屋が使えなくなった場合に、どの仮オフィスで、どの業務から再開するかをあらかじめ決めておく計画がBCPにあたります。クライシスマネジメントの一部と重なる部分もありますが、主眼は「事業の継続・復旧」に置かれています。
1-4. 違いのまとめと両輪で取り組む重要性
これらの関係性を整理すると、以下の表のようになります。これは総務省が示す考え方とも整合的です。
| 項目 | リスクマネジメント | クライシスマネジメント | BCP(事業継続計画) |
|---|---|---|---|
| タイミング | 平時(事前) | 有事(事後) | 有事(事業中断時) |
| 目的 | リスクの発生予防・低減 | 被害拡大防止・信頼回復 | 中核事業の継続・早期復旧 |
| 具体例 | 研修、マニュアル整備 | 対策本部設置、記者会見 | バックアップ拠点、代替手段 |
なるほど、タイミングと目的が全く違うんですね。「予防」のリスクマネジメント、「対応」のクライシスマネジメント、「復旧」のBCPと覚えると分かりやすい!
これら3つは独立したものではなく、相互に連携する関係にあります。平時にリスクマネジメントを徹底することで危機の発生を防ぎ、万が一危機が発生してしまった場合にはクライシスマネジメントを発動して対応し、同時にBCPに沿って事業の復旧を目指す。この3つを両輪で回すことが、企業の持続的な成長に不可欠です。
【有事の行動指針】不祥事発生後のクライシスマネジメント対応フロー
実際に不祥事などのクライシスが発生した場合、どのような流れで対応を進めるべきでしょうか。一般的に、クライシスマネジメントは以下の4つのフェーズに分けられます。
2-1. フェーズ1:初動対応(発覚~24時間)

危機発生を覚知してから、おおむね24時間以内に行うべき緊急対応です。情報の一元化と被害拡大の防止が最優先課題となります。この段階の判断とスピードが、その後の展開を大きく左右します。
2-2. フェーズ2:事実調査と法的整理
緊急対策本部を中心に、何が起きたのか、客観的な事実関係を徹底的に調査します。同時に、個人情報保護法や金融商品取引法など、関連する法令上の義務がないかを確認し、法的な論点を整理します。
2-3. フェーズ3:情報開示とステークホルダー対応
調査結果に基づき、誰に、いつ、何を、どのように伝えるかを決定し、実行します。記者会見やウェブサイトでの公表、顧客への連絡など、関係者に応じた適切なコミュニケーションが求められます。
2-4. フェーズ4:根本原因の究明と再発防止策の策定
事態が一定の収束を見た後、なぜ今回の危機が発生したのか、その根本的な原因を分析します。そして、二度と同じ過ちを繰り返さないための実効性のある再発防止策を策定し、組織全体で実行・定着させていきます。
これらのフェーズは一直線に進むだけでなく、状況に応じて前のフェーズに戻ったり、複数のフェーズが同時並行で進んだりすることもあります。しかし、この4つの段階を意識することで、混乱した状況下でも冷静かつ体系的な対応が可能になります。
本記事適用上の重要な原則
本記事で提示する手順・フレームワークは、一般的なクライシスマネジメントの標準モデルです。実際の対応にあたっては、以下を遵守してください。
- 組織内規・契約の優先: 貴組織が既に定めた『危機管理マニュアル』『就業規則』『内部統制基本方針』等がある場合、本記事の手順より当該既存規程を最優先に従ってください。
- 弁護士等専門家の事前相談: 本記事を参考に手順を変更・追加する場合、必ず事前に顧問弁護士等に相談の上、社内規程の改正・承認を経てください。
- 法令改正への追従: 本記事作成後に法改正がなされた場合、新法が優先適用されます。法改正の有無については定期的に確認してください。
【フェーズ1】初動対応で企業の明暗を分ける5つのステップ
危機発生後の24時間は、企業の運命を決めると言っても過言ではありません。パニックに陥らず、以下のステップを迅速かつ着実に実行することが極めて重要です。
3-1. Step1:緊急対策本部の設置と情報の一元化
まず、クライシスに対応するための「緊急対策本部」を設置します。トップを本部長とし、法務、広報、人事、関連事業部門などからメンバーを招集します。最も重要なのは、社内外の全ての情報を対策本部に集約し、対応の意思決定を一元化することです。情報が錯綜すると、誤った判断や矛盾した対外発信につながり、さらなる混乱を招きます。
3-2. Step2:経営トップへの迅速な報告と意思決定
現場でインシデントを覚知した担当者は、定められた報告ルートに従い、速やかに経営トップまで情報を上げなければなりません。経営トップは、報告を受けて対策本部の設置を指示し、対応の基本方針についてリーダーシップを発揮して意思決定を行います。
3-3. Step3:被害拡大の緊急防止措置
原因究明と並行して、これ以上被害が広がらないための緊急措置を講じます。
- 情報漏洩の場合:不正アクセスされたサーバーのネットワークからの隔離、ID・パスワードの変更など。
- 製品の欠陥の場合:当該製品の出荷停止、販売済み製品の回収告知の準備など。
3-4. Step4:外部専門家(弁護士等)への連絡
早い段階で、顧問弁護士や危機管理に詳しい外部の弁護士に連絡を取り、協力を仰ぐことが賢明です。法的リスクの評価、調査方法の助言、行政への報告、対外公表文のリーガルチェックなど、専門的な知見が不可欠となります。
3-5. 〔差別化軸〕中小企業における現実的な初動体制

大企業のように専任の法務・広報担当者がいない中小企業では、社長自身が対策本部長を兼ねることが多くなります。限られたリソースの中で重要なのは、平時から緊急時の連絡網と役割分担を決めておくことです。特に、ITセキュリティやフォレンジック調査(後述)を依頼できる外部ベンダーや、緊急時に相談できる弁護士との関係を事前に構築しておくことが、有事の際の迅速な対応を可能にします。
【中小企業のための事前準備チェックリスト】
- □ 顧問弁護士(または緊急時に相談可能な法律相談サービス)との契約を済ませておく
- □ サイバーセキュリティ対応を依頼できる外部ベンダーとの連携体制を確認しておく
- □ 初動報告フロー(例:現場担当者→部門長→社長→弁護士)を文書化し、社内で共有する
- □ 緊急連絡網(経営層、部門長、外部専門家)を整備し、定期的に更新する
- □ 年1回以上、危機発生を想定した初動対応シミュレーションを実施する
【フェーズ2】事実調査で遵守すべき法的義務と注意点
初動対応で状況をコントロールしつつ、並行して客観的な事実調査を進めます。このフェーズでは、感情や憶測を排し、証拠に基づいて事実を確定させることが重要です。また、調査の過程で様々な法的義務が発生する可能性に留意しなければなりません。
4-1. 調査で扱う情報の法的分類(個人情報・営業秘密等)
不祥事調査では、従業員へのヒアリング記録、PCのデータ、電子メールなど、様々な情報を取り扱います。これらの情報が「個人情報」や「営業秘密」に該当する場合、それぞれの法律に定められたルールに従って慎重に取り扱う必要があります。特に、個人情報の取り扱いには細心の注意が求められます。
4-2. 個人情報漏洩時の報告・通知義務(個人情報保護法 第26条)
もし漏洩した情報に個人データが含まれており、かつ個人の権利利益を害するおそれが大きい場合(要配慮個人情報の漏洩、1,000人を超える漏洩など)には、個人情報保護法に基づき、国(個人情報保護委員会)への報告と、漏洩した本人への通知が義務付けられています。
(漏えい等の報告等)
(出典:個人情報保護法 第26条)
第二十六条 個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失、毀損その他の個人データの安全の確保に係る事態であって個人の権利利益を害するおそれが大きいものとして個人情報保護委員会規則で定めるものが生じたときは、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、当該事態が生じた旨を個人情報保護委員会に報告しなければならない。(後略)
報告は、個人情報保護委員会が公表するガイドラインに従い、まず「速やかに(事案の態様に応じて概ね3〜5日以内)」速報を行い、その後「原則として30日以内(不正の目的による漏洩等の場合は60日以内)」に確報を行う必要があります。この義務を怠ると、行政からの命令や罰則の対象となる可能性があります。
4-3. 上場企業に課される適時開示義務(金融商品取引法)
上場企業の場合、不祥事によって生じた損害や行政処分など、投資家の投資判断に著しい影響を及ぼす「重要事実」が発生した際には、金融商品取引法および各証券取引所の規則に基づき、直ちにその内容を開示する義務(適時開示)があります。具体的な開示期限や手続きについては、東京証券取引所や名古屋証券取引所といった所属する取引所が定める規則に従う必要があり、必ず個別に確認してください。開示が遅れたり、内容が不正確だったりすると、市場の信頼を失うだけでなく、課徴金などのペナルティを受けるリスクがあります。
4-4. 証拠保全の重要性とデジタル・フォレンジック
事実調査において、証拠を保全することは極めて重要です。特にサイバー攻撃や内部不正が疑われるケースでは、PCやサーバーのログなどが重要な証拠となります。むやみに機器の電源を落としたり、データを削除したりすると、証拠が失われ、原因究明が困難になるおそれがあります。このような場合は、デジタルデータを法的な証拠として保全・解析する「デジタル・フォレンジック」の専門家と連携して調査を進めることが推奨されます。
【フェーズ3】情報開示・記者会見を失敗させないためのポイント
調査によって事実関係がある程度固まったら、ステークホルダーへの情報開示を行います。このコミュニケーションの成否が、企業のレピュテーション(評判)を大きく左右します。
5-1. 法的義務とレピュテーション対応の判断軸
情報開示を検討する際には、2つの軸で考える必要があります。
- 法的義務としての開示:個人情報保護法や金融商品取引法など、法律や規則で定められた「開示しなければならない」情報。
- レピュテーション対応としての開示:法的義務はなくても、顧客や社会からの信頼を維持・回復するために自主的に行う「開示すべき」情報。
たとえ法的義務がなくても、事実を隠蔽したり、矮小化したりする姿勢は、後に発覚した際のダメージをより甚大なものにします。誠実な姿勢で、積極的に情報を開示することが、結果的に信頼回復への近道となるケースが多くあります。
5-2. 情報開示の5W1H(いつ、誰に、何を、なぜ、どのように)
情報開示にあたっては、以下の5W1Hを明確にします。
- When(いつ):公表のタイミングはいつか。
- Whom(誰に):監督官庁、被害者、顧客、取引先、株主、メディア、従業員など、誰に伝えるか。
- What(何を):発生した事実、被害の状況、現在の対応、原因、再発防止策など、どこまで伝えるか。
- Why(なぜ):開示の目的は何か(謝罪、注意喚起、説明責任など)。
- How(どのように):記者会見、プレスリリース、ウェブサイト、個別の連絡など、どの手段で伝えるか。
5-3. 記者会見の準備と想定問答集の作成
記者会見は、企業の姿勢が最も問われる場です。準備にあたっては、登壇者(通常は経営トップ)、発表内容、配布資料を慎重に検討します。特に重要なのが「想定問答集」の作成です。メディアから投げかけられるであろう厳しい質問を事前に洗い出し、それに対して誠実に、かつ分かりやすく回答できるよう準備を重ねます。
5-4. 炎上を招く「隠蔽」「過小評価」「責任転嫁」のリスク

過去の多くの事例が示すように、記者会見で失敗する企業には共通点があります。
- 隠蔽:都合の悪い情報を隠そうとする姿勢。
- 過小評価:事態の重大さを軽く見ているような発言。
- 責任転嫁:責任を他者(現場担当者や外部環境など)に押し付ける態度。
これらの態度は、社会からの厳しい批判を浴び、いわゆる「炎上」状態を引き起こす原因となります。たとえ厳しい事実であっても、真摯に受け止め、自社の責任を認めて謝罪し、今後の対策を具体的に示すことが、信頼回復の第一歩です。
※記者会見において「責任を認める」「謝罪する」という発言は、その後の法的責任追及(損害賠償請求、行政処分等)に影響を与える可能性があります。謝罪・責任表明の文言・範囲については、必ず事前に弁護士に相談した上で、社内で決定してください。
【フェーズ4】実効性のある再発防止策の策定と運用
危機対応が一段落したら、最後にして最も重要なフェーズが「再発防止」です。単なる「報告書」で終わらせず、実効性のある仕組みとして組織に根付かせることが求められます。
6-1. 原因分析と具体的な改善策の立案
なぜ今回の危機は起きたのか。「担当者の不注意」といった表面的な原因で終わらせず、「なぜ不注意が起きる仕組みだったのか」「なぜチェック機能が働かなかったのか」といった根本原因(Root Cause)を深掘りします。その上で、業務プロセスの見直し、チェック体制の強化、ITシステムの改修、組織文化の改革といった具体的な改善策を立案します。
6-2. 取締役の善管注意義務と内部統制システムの構築(会社法)
取締役は、会社に対して善良な管理者としての注意義務(善管注意義務)を負っています。特に大会社(注:資本金5億円以上または負債総額200億円以上の株式会社。会社法第2条第6号)や指名委員会等設置会社では、会社法(第362条第4項第6号など)に基づき、リスク管理体制を含む「内部統制システム」の基本方針を取締役会で決議し、その構築・運用が求められます。不祥事の再発防止策を策定し、適切に運用することは、この取締役の義務を果たす上でも極めて重要です。これを怠った結果、会社に再び損害が生じた場合、取締役が株主から責任を追及されるリスクもあります。
6-3. 改正公益通報者保護法に対応した内部通報制度の整備

不祥事の多くは、内部からの通報によって発覚します。改正公益通報者保護法(令和4年6月1日施行)第11条に基づき、常時使用する労働者が301人以上の事業者に対しては、内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備が義務化されました。一方、労働者が300人以下の事業者については、同様の体制整備は努力義務とされています。
この法律に対応し、通報者が不利益な扱いを受けない、実効性のある内部通報制度を整備・運用することは、リスクの早期発見と自浄作用の観点から、非常に有効な再発防止策となります。
6-4. PDCAサイクルによる継続的な見直しと形骸化の防止
再発防止策は、作って終わりではありません。
- Plan(計画):再発防止策を策定する。
- Do(実行):策定した計画を実行に移す。
- Check(評価)):計画通りに実行されているか、効果は出ているかを定期的に評価・監査する。
- Action(改善):評価結果に基づき、計画をさらに改善する。
このPDCAサイクルを回し続けることで、再発防止策が形骸化するのを防ぎ、組織のコンプライアンス意識を継続的に高めていくことができます。
まとめ:平時からの備えがクライシスを乗り越える鍵となる
本記事では、クライシスマネジメントの全体像を、用語の定義から具体的な4つの対応フェーズ、そして再発防止策まで解説してきました。
クライシスマネジメントは、危機が発生してから始まる「事後対応」ですが、その成否は平時からの備えに大きく左右されます。リスクマネジメントを通じて潜在的な危機を洗い出し、いざという時のための対応マニュアルや緊急連絡網を整備し、定期的な訓練を行うこと。こうした地道な準備こそが、実際にクライシスに直面した際に、組織が冷静かつ効果的に機能するための土台となります。
危機は避けられないかもしれませんが、その被害を最小限に抑え、むしろ信頼を再構築する機会に変えることは可能です。本記事が、貴社のクライシスマネジメント体制を構築・見直しする一助となれば幸いです。
クライシスマネジメントに関するQ&A
Q1. 顧問弁護士がいない場合、誰に相談すればよいですか?
Q2. サイバー保険はクライシスマネジメントに役立ちますか?
Q3. SNSでの炎上にはどう対応すればよいですか?
【免責事項】
本稿で提供する情報は、一般的な情報提供を目的とするものであり、特定の状況における個別具体的な事案に対する法的助言ではありません。記事の内容の正確性については万全を期しておりますが、法令・通達等の改正、解釈の変更などにより、本稿執筆時点での情報が最新のものでなくなる可能性があります。実際の対応にあたっては、必ず弁護士等の専門家にご相談の上、ご自身の判断と責任において行ってください。
参考資料
- 総務省「リスクマネジメント・クライシスマネジメントに関する行政評価・監視<結果報告書>」(2021年)
- 個人情報保護委員会「個人データの漏えい等の事案が発生した場合等の対応について(ガイドライン)」
- 消費者庁「公益通報者保護制度ウェブサイト」
- 東京証券取引所「当取引所の適時開示制度の概要」
- e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」
- e-Gov法令検索「公益通報者保護法」
- e-Gov法令検索「会社法」
- e-Gov法令検索「金融商品取引法」
最終更新日:2025年10月29日

植野洋平 |弁護士(第二東京弁護士会)
検察庁やベンチャー企業を経て2018年より上場企業で勤務し、法務部長・IR部長やコーポレート本部の責任者を経て、2023年より執行役員として広報・IR・コーポレートブランディング含めたグループコーポレートを管掌。並行して、今までの経験を活かし法務を中心に企業の課題を解決したいと考え、2021年に植野法律事務所を開所。