株式会社の設立とは?発起人・資本金や設立の手続きの流れを解説
お役立ち記事一覧に戻る本記事では、株式会社を設立する際に必要な基礎知識や手続きの流れを解説します。まずは、株式会社の仕組みを理解し、設立方法やポイントをしっかりと押さえましょう。
この記事のまとめ |
✅株式会社を発起設立する場合、以下のステップがあります。 ①会社の印鑑(実印)の作成 ②定款の作成 ③定款の認証 ➃出資 ⑤設立登記 |
Contents
会社の設立に取り掛かる前に-どの会社形態があっているのか?
会社には「株式会社」「合同会社」「合資会社」「合名会社」の4種類があります。よく目するのは「株式会社」ですが、企業の規模や事業の性質などによっては「合同会社」を選択した方がメリットが大きい場合もあります。
形態 | メリット | デメリット |
株式会社 | ■社会的信用が得やすい ■株式上場できる ■資金調達方法の選択肢が多い | ■合同会社に比べて、設立にかかる費用や手続きが多い ■決算公告の義務があり、掲載料もかかる ■役員任期がある |
合同会社 | ■設立費用が抑えられる ■スピーディーな意思決定が可能 ■決算公告の義務がない ■役員の任期がない ■利益配分が自由に決められる | ■株式会社よりも知名度が低い ■資金調達の方法が株式会社よりも限られる ■出資者(社員)同士が対立すると意思決定が困難になる |
自由に経営判断したい、少額や急ぎで設立したいという場合は合同会社を検討してみてもいいかもしれません。合同会社設立後も手続きを行うことで株式会社へ変更することが可能です。
株式会社とは?基本的な仕組みと特徴
株式会社は、株式の発行によって資金を調達する企業形態で、投資家から資金を集めやすい点が特徴です。
株主が出資を行うことで、会社は資本金として事業運営に必要な資金を確保できます。
また、出資者が負う責任範囲は、引き受けた株式の金額に限定されるため、万が一のリスクを抑えられるメリットがあります。
取締役会や株主総会などの組織を通じて意思決定を行う仕組みは、会社の透明性を高める要因にもなります。出資者や利害関係者にとっても、経営状態が把握しやすいため、外部からの信用を得やすい点が大きいといえます。
ただし、役員の選任や決算手続き、税金など、個人事業主と比べると管理が複雑になる側面もあります。新たに株式会社を設立する際は、手続きの流れや維持に必要なコストを十分に見極めることが重要です。
株式会社設立の基礎知識
株式会社の設立には発起設立と募集設立の2つの方法があり、一般的には発起設立が多用されます。いずれの方法も、まずは定款の作成から始まり、資本金を払い込み、役員を選任して登記するという流れは共通です。
発起設立と募集設立の違い
発起設立 | 発起人が開業資金を用意する ・会社設立における手続きが容易でスピーディー ・役員の決定など、発起人の間で同意が得られれば、さまざまなことを決定できる |
募集設立 | 発起人以外の人から資金を募る 「創立総会」を実施しなければならない等、手続きが煩雑 |
募集設立は株式を不特定多数の投資家に募集して資金を集める方法で、発起人が用意できない資金を集めることができますが、追加で創立総会を開く必要があるなど、手続きが煩雑になるデメリットが大きく、多くは発起設立が選ばれているため、本記事では発起設立の方法をご紹介します。
発起人の役割と要件
発起人とは、会社を立ち上げるために定款を作成し、株式を引き受けるなど、設立準備を行う中心的な存在です。一般的には個人が担うことが多いですが、法人が発起人となるケースもあります。
発起人の役割 ■出資を行う ■定款の作成・認証などの手続きを行う ■会社の重要事項を決定する |
発起人は定款に署名や押印をし、資本金の出資や登記申請において重要な責任を負います。発起人が複数名いる場合、それぞれの役割分担を決めておくと手続きが円滑に進むでしょう。
なお、発起人は定款認証で印鑑登録証明書を提出しなければなりませんが、発起人になるための要件は定められておらず、日本国籍の有無や年齢制限などの制限もありません。ただし、反社会的勢力でないかなど、一般的な適格性は確認される傾向にあります。
発起設立の手続きの流れ
発起設立では、発起人が全ての発行株式を引き受けて会社設立の手続きを進めます。以下のステップを正しく把握し、スムーズに進めましょう。
複数の発起人がいる場合は、各人の役割分担を決め、手続きを分担して進めることが重要となります。
資本金の払い込みや取締役の選任など、設立に必須の作業を確実に踏まえていくことが、後々のトラブル防止につながります。
ここでは、発起設立において押さえておきたい6つのステップを解説します。必要書類や記載内容については、公的機関や専門家の案内を参照して確認すると安心です。
① 会社の印鑑(実印)の作成
会社の実印(代表社印)は法人登記の手続きで提出する際に必要(登記を電子する場合は不要)となりますので、事前に用意しておきましょう。
サイズは「大きさ10.0mm以上、30.0mm以内の正方形におさまるもの」と規定があります。一般的に販売されているのは18mmの二重丸で、二重丸の外側の部分(回文)に会社名、内側部分(中文)には代表者の役職名を入れます。
その他、銀行印や、請求書類等に捺印する社印(角印)もこのタイミングでの作成を検討しましょう。
➁ 定款の作成
法人設立登記を行う際に必須の書類として、定款があります。定款とは、会社の基本規約や基本規則を記載した書類のことです。
定款に記載する事項としては、「絶対的記載事項(必ず記載が必要)」「相対的記載事項(記載しなければ効力を生じない)」「任意的記載事項(記載してもしなくても良い)」の3種類があります。
絶対的記載事項 ■目的 ■本店所在地 ■設立に際して出資される財産の価額または最低額 ■発起人の氏名又は名称及び住所 ■発行可能な株式数 |
相対的記載事項や任意的記載事項によって、会社に独自のルールを追加することも可能です。例えば株式譲渡制限や役員の任期など、将来的に資金調達や組織運営に影響を与える事項は丁寧に検討しましょう。
一度認証を受けた定款は設立後に大きく変更する場合、株主総会の特別決議など手間がかかります。設立前の段階で将来の事業展開をある程度見越し、内容を詰めておくことが大切です。
なお、電子定款を利用すると製本する必要がなく、印紙税もかからないため、費用を抑えられるメリットがあります。
➂ 定款の認証
定款の案ができたら、公証役場に問合せをしましょう。役場の指示に従いメール等で定款のファイルを送付し、公証人が内容の事前確認を行います。その後印刷、製本、押印を行い、予約した日時で認証を受けることとなります。
この認証を受けることで定款が公式な書類としての効力を持ち始めることになります。
定款認証に必要な書類等 ■ 定款(3通) ■ 実質的支配者となるべき者の申告書(事前確認の際にも送付) ■ 発起人全員分の印鑑登録証明書と実印 ■ 委任状(代理人を立てる場合) ■本人確認書類 ■ 定款認証の手数料(3万円〜5万円) ■ 収入印紙代(4万円) |
実質的支配者となるべき者の申告書、印鑑登録証明書、本人確認書類については、事前確認の際に提出が求められる場合がありますので、早めに準備しておきましょう。
公証人認証が終わった定款は会社設立の土台となる重要書類です。後の登記手続きでも活用しますので大切に保管しましょう。
➃ 資本金の払い込み
金銭で出資する場合、発起人代表者の銀行等の口座を用意し、発起人代表者本人と他の発起人は、当該口座に対して出資金を入金することにより、出資を履行したことになります。
入金を行ったら通帳の①表紙②1ページ目(口座名義人や銀行名、口座番号)③資本金を払い込んだことが分かるページをコピーし、出資金払込があったことを示す書類として登記申請時に提出します。
通帳の写しの代わりに、下記でも代用ができます。インターネットバンキングの場合はキャッシュカードの券面のコピーも用意しておくことをお勧めいたします。
出資金の払込みがあったことの証明書 ■ 通帳のコピー ■ 取引明細表 ■ インターネットバンキングの画面のスクリーンショットを印刷 |
また、出資は金銭を払い込む形が原則となっていますが、パソコンや機械設備など金銭以外の資産を出資する「現物出資」も認められています。ただし、現物出資の場合は裁判所の選任する検査役の調査が必要となるケースがあるため注意しましょう。
資本金が大きければ登録免許税や法人住民税が高くなる反面、社会的信用力が高まるなどのメリットもあります。事業規模や財務計画に合わせて適切に設定してください。
⑤ 設立登記
法務局に必要書類を提出し、登録免許税を納付して設立登記を行えば、株式会社が成立します。
登記申請には多数の書類が必要です。書類不備があると追って提出を求められるなど余計に時間がかかってしまう可能性があるため、注意しましょう。
設立登記申請時に必要な書類 ■ 登記申請書 ■ 定款 ■ 本店所在場所決議書 ■ 取締役及び代表取締役 就任承諾書 ■ 印鑑証明書(代表取締役個人) ■ 資本金の払い込みがあったことの証明書 ■ 実印(代表取締役個人) ■ 収入印紙(資本金によって最低15万円~) ■ 印鑑届書(➀で作成した実印を届出) |
登記完了後は、法人名義の印鑑証明書が取得できるようになります。今後の契約や口座開設などに必要となるため、早めに発行手続きを進めることをおすすめします。
会社設立にかかる費用と資金調達
登録免許税や定款認証などの費用
登録免許税は、資本金に対して課される税金で、設立時の大きなコストの一つとなります。資本金が大きいほど税額も上がるため、設立時に必要な資金計画はしっかり立てる必要があります。
その他、会社実印や銀行印の作成費用、専門家へ依頼する場合の報酬なども発生する可能性があります。各費用の目安を把握しておくことで、設立準備をスムーズに進められるでしょう。
支払い先 | 内容 | 株式会社 | 合同会社 |
公証役場 | 定款用収入印紙代 | 40,000円 (電子定款の場合は不要) | 40,000円 (電子定款の場合は不要) |
定款の認証手数料 | 30,000〜50,000円※ | 0円 | |
法務局 | 登録免許税 | 150,000円 または 資本金額 × 0.7% 上記のどちらか高い額を納税 | 60,000円 または 資本金額 × 0.7% 上記のどちらか高い額を納税 |
※・資本金100万円未満:30,000円 ・資本金100万円以上300万円未満:40,000円 ・資本金300万円以上:50,000円 |
各種補助金や融資の活用
自治体や国の施策として、創業支援の補助金や助成金が用意されている場合があります。要件を満たせば初期投資や人件費負担の一部を軽減できるため、該当する制度を調べてみる価値は十分にあります。
融資の場合、日本政策金融公庫や民間金融機関の創業融資を利用するケースが多いです。事業計画や返済計画を明確に示すことで、低金利で資金を借り入れることも可能です。
あらかじめ投資家や金融機関との連絡を密にし、資金調達の見通しが立った状態で会社設立に臨むと、資金繰りの不安を軽減できます。急ぎすぎず、時間をかけて準備を行いましょう。
会社設立後に必要な手続き
会社設立後も、税務署や自治体への届出、社会保険の手続きなど、さまざまな手続きが必要となります。
法人設立届出書や青色申告承認申請、源泉所得税関連の届出など期限が定められているものが多いため、早めの把握が肝心です。
また、従業員を雇用する場合には社会保険・労働保険への加入手続きを行います。これらの手続きを怠ると罰則やペナルティが科される場合もあるため、注意が必要です。
印鑑カード、印鑑証明書、登記事項証明書の取得
設立登記がされると、法務局で登記事項証明書や、印鑑カードを作成して印鑑証明書を取得できるようになります。次項の法人名義の銀行口座開設等で必要になりますので、取得しておくとスムーズに今後の手続きを進められます。
法人名義の銀行口座開設
株式会社として正式に活動するためには、法人名義の銀行口座が必要です。取引先からの入金や各種経費の支払いは法人名義の口座で行うのが基本となります。
銀行によっては口座開設時に登記簿謄本や会社実印、代表者の本人確認書類など多くの書類が必要となるため、あらかじめ準備を整えておきましょう。口座を複数持つ場合は管理が煩雑になるため、メインバンクとサブバンクをどう使い分けるか計画しておくと後々の経理がスムーズです。
税務署・自治体への各種届出
法人の設立後、法人の設立届を提出する必要があります(税務署、都税事務所、市町村役場)。
また税務署では法人設立届出書のほかに、給与支払い事務所等の開設・移転・廃止届出書、青色申告承認申請書、消費税関係の届出書、源泉所得税関係の届出書も法人設立届出書と同時に提出するとスムーズです。
提出先 | 提出書類 | 期限 |
税務署 | 法人設立届出書※1 | 設立から2か月以内 |
給与支払い事務所等の開設・移転・廃止届出書 | 事務所の開設から1か月以内 | |
青色申告の承認申請書 | 確定申告期日までに | |
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書※2 | 確定申告期日までに | |
インボイス登録センター | 適格請求書発行業者の登録申請書※3 | はやめに |
都道府県税務署 | 法人設立・設置届出書※1 | 自治体による |
市町村役場※4 | 法人設立・設置届出書 | 自治体による |
※1 全部事項証明書、定款のコピーを求められる場合があります。 ※2 給与を支払う従業員が常時10人未満である事業所の場合 ※3 適格請求書発行業者として登録する場合 ※4 23区は不要です |
社会保険・労働保険の加入手続き
従業員を雇用する場合、公的年金や健康保険に加入することが法律で義務付けられています。社会保険の手続きは年金事務所、労働保険は労働基準監督署など異なる窓口に届け出る必要があります。
保険関係は会社の設立日から加入対象となるので、早めに加入手続きを済ませましょう。保険と聞くと手続きが複雑に思えますが、電話窓口等、行政の案内にはつながりやすくなっていますので、積極的に活用しましょう。
社会保険や労働保険への加入は従業員の安心につながるだけでなく、会社としての信頼性やイメージ向上にも寄与します。事業規模に応じて適切に対応していきましょう。
提出先 | 提出書類 | 添付書類 | 期限 |
管轄の年金事務所 | 新規適用届 | ● 全部事項証明書 ● 法人番号指定通知書のコピー ● 保険料口座振替納付申出書 | 事実発生から5日以内 |
被保険者資格取得届 | |||
被扶養者(異動)届 | ● 被扶養者の戸籍謄本 ● 住民票の写し | ||
管轄の労働基準監督署 | 保険関係成立届 | ● 全部事項証明書 ● 雇い入れ日の確認できる書類(労働者名簿等) | |
概算保険料申告書 | ● 雇い入れ日の確認できる書類(労働者名簿等) | 事実発生から10日以内 | |
管轄のハローワーク | 雇用保険適用事業所設置届 | ● 全部事項証明書 ● 法人番号指定通知書のコピー ● 労働保険 保険関係成立届の控え ● 雇い入れ日の確認できる書類(労働者名簿等) | 事実発生から10日以内 |
よくある質問
最低資本金はいくらからでも良いの?
現在の会社法では、最低資本金1円での設立も可能です。ただし、実際の事業運営や信用力の面から考えれば、ある程度の運転資金を確保できる金額を設定するほうが無理がありません。
資本金が小さすぎると、金融機関からの融資が受けづらくなったり、取引先からの信頼を得にくくなったりすることがあります。一時的な目標額でも、事業開始後に増資する選択肢はあるため、最初から極端に多くする必要はありません。
将来に向けた投資計画や営業活動の規模を踏まえて、現実的かつ慎重に金額を設定することが大切です。
個人事業主から法人化するタイミングの目安は?
個人事業主としてある程度売上や利益が安定し、税負担が増えてきたと感じたら法人化の検討時期といえます。利益額が増えるほど法人の税制メリットが大きくなる可能性があります。
また、社会的信用を高めたい場面や大口取引を増やしたい場合も、株式会社への切り替えが有効です。法人化はビジネスの継続性や信頼性を高める上で効果的な手段となります。
ただし、設立費用や維持コストがかかる点も踏まえて、十分なリサーチとシミュレーションを行い、自社の事業規模や経営方針に合ったタイミングを見極めることが重要です。
まとめ
株式会社の設立は、仕組みや流れを正しく理解すれば決して難しいものではありません。発起設立、募集設立のいずれの方法を選ぶにしても、定款作成や資本金の払い込み、登記などのステップをステージごとに丁寧にこなすことが大切です。
設立後にも税務や社会保険など、多岐にわたる届出や手続きが待っていますが、これらの手続きは法人としての活動をきちんと行うための基礎でもあります。信用力を高めつつ、しっかりとした経営基盤を築くためにも、時間をかけて準備しましょう。
この記事を参考に、会社の形態や資本金の設定、設立後の運営など、今後の経営戦略をもう一度見直してみると良いでしょう。事業の発展のために、最適なスタートを切ってください。