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  • スタートアップ顧問弁護士の選び方|失敗しない5つのポイントと費用・タイミング

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    スタートアップの経営者にとって、顧問弁護士は「コスト」なのか、それとも「投資」なのか。この問いは、事業の成長フェーズにおいて多くの経営者が直面する課題です。資金調達、人材採用、プロダクト開発と、限られたリソースをどこに投下すべきか悩む中で、法務対応は後回しにされがちかもしれません。

    しかし、法務リスクが顕在化してからでは手遅れになるケースが非常に多いのが、スタートアップの現実です。一つの契約ミスが事業の根幹を揺らがし、資金調達の失敗に繋がることもあります。

    この記事では、スタートアップが顧問弁護士を事業成長のパートナーとして最大限に活用するための知識を網羅的に解説します。事業フェーズごとの最適な契約タイミングから、失敗しない選び方の5つのチェックポイント、費用を検討する際の注意点、そしてコストを最適化するリーガルテック活用術まで、具体的なアクションに繋がる情報を提供します。自社に最適なリーガルパートナーを見つけ、事業を次のステージへと加速させましょう。

    顧問弁護士の費用を単なる固定費と捉えるのは早計です。むしろ、将来の大きな損失を防ぎ、事業成長の機会を創出するための戦略的な「投資」と考えるべきです。その理由は大きく3つあります。

    毎月コストがかかる顧問弁護士、具体的なメリットがイメージしづらいな…。

    Contents

    ① 予防法務による致命的リスクの回避

    スタートアップが直面するリスクは、契約書の不備、労務トラブル、知的財産権の侵害など多岐にわたります。これらが顕在化すると、事業停止や多額の損害賠償に繋がりかねません。

    顧問弁護士は、これらのリスクを未然に防ぐ「予防法務」の専門家です。

    • 契約書レビュー: 取引先との契約書に潜む不利な条項を事前に発見・修正します。
    • 労務管理: 雇用契約書や就業規則を整備し、従業員とのトラブルを防ぎます。特に、業務委託契約と雇用契約の区別は重要で、実態に合わない契約は将来的なリスクとなります。
    • 知的財産戦略: 事業の核となる技術やブランドを知的財産権で保護し、模倣を防ぎます。

    法務省のガイドラインも、スタートアップが弁護士を活用することの重要性を指摘しており、事業基盤を固める上で不可欠な役割を強調しています。

    ② 事業スピードを加速させる戦略的パートナー

    「このビジネスモデルは法的に問題ないか?」「新しいサービスを始める際の利用規約はどうすればいいか?」

    事業の意思決定において、法的な確認が必要な場面は頻繁に訪れます。顧問弁護士がいれば、都度弁護士を探す手間なく、迅速に相談できます。これにより、経営者は迷うことなくスピーディーな意思決定が可能となり、事業展開の機会損失を防ぎます。

    また、継続的な関係を通じて事業内容を深く理解した顧問弁護士は、単なるリスク指摘に留まらず、法的な観点から事業成長を後押しする戦略的なアドバイスを提供してくれます。

    ③ 資金調達やM&Aにおける企業価値の向上

    資金調達やM&Aの際、投資家や買収企業は必ず法務デューデリジェンス(法務DD)を実施します。これは、対象企業の法務リスクを徹底的に調査するプロセスです。

    この過程で、過去の契約書の不備、未払残業代のリスク、株主間契約の問題などが発覚すると、企業価値(バリュエーション)が大幅に引き下げられたり、最悪の場合、取引自体が破談になったりします。

    日頃から顧問弁護士と連携し、法務体制を整備しておくことは、法務DDをスムーズに乗り切り、自社の企業価値を正当に評価してもらうための重要な布石となります。

    【事業フェーズ別】顧問弁護士が必要になる最適なタイミング

    顧問弁護士の必要性は、企業の成長フェーズによって変化します。自社がどの段階にあり、どのような法務課題に直面しているかを把握することが、最適なタイミングを見極める鍵となります。法務省のガイドラインでは、弁護士に相談すべき典型的なタイミングとして「会社設立時」「初めて従業員を雇用する時」「外部から初めて出資を受ける時」を挙げています。

    シード期:事業基盤の構築(会社設立、株主間契約、知財保護)

    事業のアイデアを形にする最初の段階です。この時期の法務対応が、将来の成長の土台を決定づけます。

    • 会社設立・定款作成: 事業内容に合った機関設計を行います。
    • 株主間契約の締結: 共同創業者間の役割や株式の取り扱いを明確にし、将来の対立を防ぎます。
    • 知的財産権の確保: ビジネスの核となるアイデアや技術、サービス名を特許権や商標権で保護します。
    • 初期の契約書整備: 業務委託契約書や秘密保持契約書(NDA)のひな形を作成します。

    アーリー期(シリーズA前後):事業拡大と守りの強化(資金調達、労務、利用規約)

    プロダクト・マーケット・フィット(PMF)を達成し、事業が本格的に拡大するフェーズです。人材の採用や外部からの資金調達が始まり、法務課題も複雑化します。

    • 資金調達: 投資契約書や株主間契約書のレビュー、種類株式の発行など、専門的な対応が必須です。種類株式の発行など、より複雑な手続きについては「資金調達を成功させるための投資契約のポイント」の記事も参考にしてください。
    • 労務管理: 従業員の増加に伴い、雇用契約書や就業規則の整備が急務となります。また、個人フリーランスへの業務委託では、2024年10月1日に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス保護新法)」により、発注側に報酬支払期日の設定・遅延禁止等の新たな義務が課されます。この新法への対応も顧問弁護士に確認することが重要です。ストックオプションの設計もこの時期の重要な課題です。ストックオプションの法務・税務については、「【スタートアップ向け】ストックオプションの設計と法務・税務の注意点」で詳しく解説しています。
    • 各種規約の整備: Webサービス等の利用規約やプライバシーポリシーを作成・更新します。
    • 許認可の確認: 事業拡大に伴い、新たな許認可が必要になる場合があります。

    ミドル期以降(シリーズB以降):ガバナンスと出口戦略(IPO/M&A準備)

    事業が安定成長期に入り、IPOやM&Aといった出口戦略を視野に入れるフェーズです。上場企業に求められるレベルの内部統制やコーポレート・ガバナンス体制の構築が必要になります。

    • 内部統制・コンプライアンス体制の強化: 取締役会の運営、内部規程の整備、反社会的勢力排除の仕組み作りなどを行います。
    • IPO/M&A準備: 証券会社や監査法人による審査に対応できる法務体制を構築します。
    • 複雑な契約への対応: 大企業との業務提携や海外展開など、より高度な契約交渉が増加します。

    失敗しない顧問弁護士の選び方|最重要5つのチェックポイント

    顧問弁護士なら誰でも良いわけではありません。特にスタートアップは、特有の課題やスピード感に対応できる弁護士を選ぶ必要があります。以下の5つのポイントを必ず確認しましょう。

    ① スタートアップ法務(特に資本政策)への深い専門性と実績

    スタートアップ法務は、一般的な企業法務とは異なる専門性が求められます。

    • 資金調達: 種類株式、新株予約権、投資契約など、エクイティ・ファイナンスに関する知識と交渉経験が豊富か。
    • ストックオプション: インセンティブ設計に関する法務・税務の知識があるか。
    • IPO/M&A: 出口戦略を見据えたアドバイスが可能か。

    過去にどのようなスタートアップを、どのフェーズで支援してきたか、具体的な実績を確認することが重要です。

    ② 自社の事業モデル(SaaS, FinTech等)への理解度

    あなたの会社のビジネスを深く理解しようと努めてくれるかは、非常に重要なポイントです。

    • 業界特有の規制: FinTech(金融規制)、HealthTech(医療・薬機法)、SaaS(個人情報保護法、特定商取引法)など、自社の業界特有の法規制に詳しいか。
    • ビジネスモデルの理解: 事業の収益構造や将来の展望を理解した上で、法的なアドバイスをくれるか。

    事業への理解が浅いと、リスクを過度に恐れて事業にブレーキをかけるような、的外れなアドバイスに繋がりかねません。

    ③ レスポンスの速さとコミュニケーションの相性

    スタートアップの意思決定はスピードが命です。質問に対して数日も返信がないような弁護士では、ビジネスの機会を逃してしまいます。

    • 連絡手段: チャットツール(Slack、Teamsなど)に対応しているか。
    • レスポンス速度: 通常、どのくらいの時間で返信がもらえるか。
    • 説明の分かりやすさ: 専門用語を多用せず、経営者が理解できる言葉で説明してくれるか。

    面談などを通じて、ストレスなくコミュニケーションが取れる「相性の良さ」も確認しましょう。

    ④ 明確な料金体系と業務範囲

    契約前に、料金体系とどこまでの業務が顧問料に含まれるのかを明確に確認することが不可欠です。

    料金体系特徴注意点
    月額固定型毎月定額の料金で、定められた時間・範囲内の相談や契約書レビューに対応。含まれる業務の範囲(例:契約書レビューは月〇通まで、訴訟対応は別途費用など)を明確に確認する必要がある。
    タイムチャージ型弁護士が稼働した時間に応じて費用が発生。稼働時間の管理が不透明だと、想定外の高額請求に繋がるリスクがある。
    ハイブリッド型月額固定の基本料金+超過分や特殊案件はタイムチャージ。スタートアップにとってはバランスが良いが、料金体系の理解が重要。

    「基本契約に含まれる業務」と「別途費用が発生する業務」の線引きを、書面で具体的に確認しましょう。特に、契約期間と中途解約の条件についても事前に確認しておくことが重要です。

    ⑤ リーガルテックへの理解と連携姿勢

    契約書レビューの効率化など、リーガルテックの活用はスタートアップ法務において不可欠になりつつあります。

    • リーガルテックへの理解: AI契約書レビューなどのツールに理解があり、それらを活用した効率的な業務フローの構築に協力的か。
    • 柔軟性: 自社が導入しているツールと連携できるか。

    弁護士業務の効率化に前向きな姿勢は、コスト意識やITリテラシーの高さを示す一つの指標にもなります。リーガルテックの選び方については、「【2024年最新】リーガルテック比較|スタートアップにおすすめのサービスとは」もご参照ください。

    VC・投資家から紹介された弁護士の注意点|利益相反リスクとは?

    資金調達の過程で、VC(ベンチャーキャピタル)や投資家から弁護士を紹介されるケースは少なくありません。実績のある弁護士であることが多く、一見すると安心できるように思えます。しかし、ここには「利益相反」という潜在的なリスクが潜んでいます。

    なるほど、VCと自社の利益は必ずしも一致しないから、弁護士も中立とは限らないのか。

    なぜ利益相反が問題になるのか?

    利益相反とは、一方の利益になることが、もう一方の不利益になる状況を指します。投資家とスタートアップの関係は、事業を成長させるという共通の目標がある一方で、投資契約の具体的な条件交渉においては、利害が対立する場面があります。

    例えば、

    • 企業価値(バリュエーション)の算定: VCはより低い企業価値で出資したい一方、スタートアップはより高い価値を求めます。
    • 経営陣への株式買取請求権(プットオプション)の条件: VCに有利な条件は、経営陣にとって厳しい制約となり得ます。
    • ダウンラウンド時の希薄化防止条項: 既存株主であるVCの利益を守る条項は、将来の資金調達や従業員のストックオプションに影響を与える可能性があります。

    これらの交渉において、VCから紹介された弁護士が、紹介元であるVCに有利な判断を無意識のうちにしてしまう可能性はゼロではありません。弁護士には守秘義務があり、弁護士職務基本規程で利益相反行為は厳しく規律されていますが、人間関係や将来の紹介案件などを考えると、完全に中立を保つのが難しい場面も想定されます。

    投資契約の詳細については、「投資契約書の重要ポイント解説」で詳しく解説しています。

    対策:セカンドオピニオンの活用と独立性の確認

    VCから紹介された弁護士に依頼する場合でも、以下の対策を講じることでリスクを低減できます。

    1. セカンドオピニオンの取得(強く推奨):
      特に投資契約のような重要な契約を締結する際には、自社で独自に探した、完全に独立した立場の弁護士に契約書レビューを依頼し、セカンドオピニオンを求めることが極めて重要です。
    2. 独立性の確認:
      面談の際に、「これまでそのVCとどのような関係があったか」「利益相反の可能性がある場合、どのように対応するか」を率直に質問し、明確な回答を得ることが重要です。

    紹介された弁護士に依頼する際も、最終的な決定権は自社にあることを忘れず、主体的に判断することが重要です。

    顧問弁護士の具体的な探し方と契約までの4ステップ

    自社に合った顧問弁護士を見つけるための具体的なプロセスを4つのステップで解説します。

    STEP1:候補者を探す(紹介、専門プラットフォーム、セミナー等)

    • 信頼できる経営者からの紹介: 同じ業界や事業フェーズの経営者からの紹介は、ミスマッチが少ない有効な手段です。
    • スタートアップ特化の紹介プラットフォーム: 近年、スタートアップ法務に強い弁護士を紹介するオンラインサービスが増えています。
    • セミナーやイベント: スタートアップ向けのセミナーに登壇している弁護士は、その分野の専門家である可能性が高いです。
    • 弁護士会の相談窓口: 各地域の弁護士会でも、企業の法務相談に応じています。

    STEP2:面談で確認すべき質問リスト

    複数の候補者と面談し、比較検討することが重要です。その際に確認すべき質問リストの例を紹介します。

    カテゴリ質問例
    専門性・実績・これまでどのようなスタートアップを支援してきましたか?(業界、フェーズなど)
    ・資金調達(エクイティ)に関する実績を具体的に教えてください。
    ・当社のビジネスモデル(例:SaaS)について、どのような法務リスクが考えられますか?
    業務スタイル・主な連絡手段は何ですか?(メール、チャットツールなど)
    ・相談してから、通常どのくらいで最初の返信をいただけますか?
    ・緊急時の対応は可能ですか?
    料金・契約・顧問契約の料金体系と、その範囲に含まれる業務を具体的に教えてください。
    ・契約書レビューは月何通まで可能ですか?超過した場合の料金はどうなりますか?
    ・契約期間と中途解約の条件を教えてください。
    相性・価値観・先生がスタートアップを支援する上で、最も大切にしていることは何ですか?
    ・リーガルテックの活用について、どのようにお考えですか?

    STEP3:見積もりと業務範囲の比較検討

    複数の弁護士から見積もりと業務範囲の提案書を取り寄せ、客観的に比較します。料金の安さだけで選ぶのではなく、自社の課題解決に最も貢献してくれるパートナーは誰か、という視点で判断しましょう。比較する際は、(1)基本顧問料に含まれる業務時間・件数、(2)超過分やスポット案件の追加費用ルール、(3)契約期間と中途解除の条件、を明確にすることが重要です。

    STEP4:顧問契約書の内容確認と締結

    契約する弁護士が決まったら、顧問契約書の内容を十分に確認します。特に、以下の点は重要です。

    • 業務範囲
    • 顧問料と支払い方法
    • 別途費用が発生する場合の条件
    • 秘密保持義務
    • 契約期間と解除条項

    不明点があれば遠慮なく質問し、納得した上で契約を締結しましょう。

    スタートアップの顧問弁護士費用とコスト最適化の方法

    顧問弁護士の必要性は理解できても、やはり費用は気になる点です。ここでは、費用の考え方と、コストを賢く最適化する方法について解説します。

    顧問料の考え方と料金体系(月額固定・タイムチャージ・ハイブリッド)

    顧問料は、企業のフェーズや依頼する業務範囲によって大きく異なります。料金体系は前述の通り主に3種類あり、自社の状況に合わせて選択することが重要です。安さだけで選ぶのではなく、サービス内容とのバランスを見極める必要があります。複数の弁護士から見積もりを取り、業務範囲と料金をしっかり比較検討しましょう。

    【図解】リーガルテックとの賢い分業で費用対効果を最大化する

    限られた予算の中で法務体制を構築するには、リーガルテックと弁護士を賢く使い分ける「分業」が非常に有効です。

    (図解イメージ:リーガルテックと弁護士の連携フロー)

    1. 契約書ドラフト受領
    2. 【リーガルテックの役割】一次レビュー: AI契約書レビューツールで、定型的な条項の抜け漏れや一般的なリスクを自動で洗い出す。(コスト削減領域)
    3. リスク項目の整理: ツールが検出したリスクのうち、特に事業に影響が大きいものを絞り込む。
    4. 【弁護士の役割】最終レビュー・戦略的助言: 絞り込んだリスク項目について、自社の事業モデルに即した法的判断や、相手方との交渉方針について弁護士に相談する。(弁護士必須領域)
    5. 契約締結

    このように、定型的な作業はリーガルテックに任せてコストと時間を削減し、弁護士にはより高度で戦略的な判断が求められる部分に集中してもらうことで、費用対効果を最大化できます。

    非弁行為リスクを避けるための正しい使い分け(弁護士法第72条)

    リーガルテックは便利なツールですが、その役割には明確な限界があります。弁護士でない者が報酬を得て「法律事務」を行うことは、弁護士法第72条で禁止される「非弁行為」に該当する可能性があるためです。

    第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律その他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

    出典:弁護士法 第七十二条

    リーガルテックと弁護士の役割分担は、この「法律事務」に該当するかどうかが境界線となります。

    • リーガルテック(情報提供): 定型的なリスクの抽出(例:「この条項は一般的に不利です」という情報提供)や、書式・パターンの照合は、通常「法律事務」には該当しません。
    • 弁護士(法的判断): しかし、「あなたの事業モデルに対する影響度の判断」や「交渉方針の具体的な提言」は、個別具体的な法的判断であり、弁護士にしかできない「法律事務」に該当します。

    この境界線を理解し、リーガルテックのレビュー結果を鵜呑みにせず、最終的な経営判断に関わる部分は必ず弁護士に相談することが、リスクを回避し、ツールを安全に活用する上で不可欠です。

    よくある質問(FAQ)

    Q1: スタートアップに顧問弁護士はいつから必要ですか?

    A1: 理想は、共同創業者と株主間契約を結ぶシード期からです。法務省のガイドラインでも示されている通り、遅くとも外部から初めて資金調達をするタイミングや、初めて従業員を雇用するタイミングまでには契約することをお勧めします。リスクが顕在化する前に「予防法務」の体制を整えることが重要です。
    Q2: 顧問弁護士の費用はどのくらいかかりますか?

    A2: 費用は事業フェーズや依頼範囲によって大きく異なるため、一概に「相場」を示すことは困難です。重要なのは、複数の弁護士から見積もりを取得し、顧問料に含まれる業務の範囲(時間、件数など)や、追加費用が発生する際のルールを明確に比較検討することです。
    Q3: リーガルテックだけで法務対応は十分ですか?

    A3: 十分ではありません。リーガルテックは定型的なリスクチェックに非常に有効ですが、自社のビジネスモデルに即した個別具体的な法的判断や、交渉戦略に関する助言はできません。これらは弁護士法で弁護士の独占業務とされる「法律事務」にあたり、最終的な判断は必ず弁護士に相談する必要があります。
    Q4: VCから紹介された弁護士に依頼しても問題ありませんか?

    A4: 必ずしも問題があるわけではありませんが、「利益相反」のリスクに注意が必要です。特に投資契約の交渉など、VCと自社の利害が対立する場面では、弁護士がVC側に有利な判断をする可能性もゼロではありません。対策として、自社で探した別の弁護士にセカンドオピニオンを求めることを強くお勧めします。

    まとめ:自社に最適なリーガルパートナーを見つけ、事業を加速させよう

    顧問弁護士は、トラブルが起きた時だけ頼る存在ではありません。スタートアップにとって、顧問弁護士は事業の土台を守り、成長を共に創り上げていく重要な「リーガルパートナー」です。

    この記事で解説したポイントを参考に、自社の事業フェーズと課題を整理し、最適なパートナーを見つけるための一歩を踏み出しましょう。

    • 必要性の理解: 顧問弁護士は「コスト」ではなく「投資」。
    • タイミング: リスクが顕在化する前、理想はシード期から。
    • 選び方: スタートアップ法務への専門性と事業理解度が鍵。
    • 費用: リーガルテックとの分業でコストを最適化。

    適切な顧問弁護士との連携は、経営者が事業そのものに集中できる環境を作り出し、企業の持続的な成長を力強くサポートしてくれるはずです。

    免責事項

    本記事は、スタートアップの顧問弁護士選定に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の案件に対する法的アドバイスを提供するものではありません。個別具体的なビジネス判断(例:契約書の承認、資本政策の決定)については、自社が独立して選定した弁護士の直接的なアドバイスをあおいでください。

    また、本記事で言及する法令は2025年10月時点の情報ですが、法律は随時改正されます。最新の法令情報は e-Gov 法令検索または弁護士会の公式サイト等にてご確認ください。

    参考資料



    植野洋平弁護士(第二東京弁護士会)
     検察庁やベンチャー企業を経て2018年より上場企業で勤務し、法務部長・IR部長やコーポレート本部の責任者を経て、2023年より執行役員として広報・IR・コーポレートブランディング含めたグループコーポレートを管掌。並行して、今までの経験を活かし法務を中心に企業の課題を解決したいと考え、2021年に植野法律事務所を開所。

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