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  • 内部通報制度の義務化とは?改正公益通報者保護法のポイントと体制整備を解説

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    企業のコンプライアンス体制において、「内部通報制度」の重要性はますます高まっています。2022年(令和4年)6月1日に施行された改正公益通報者保護法により、常時使用する労働者数が300人を超える事業者には実効性のある制度の構築・運用が法的に義務付けられました。さらに、2025年(令和7年)6月には新たな改正法が成立し、2026年中の施行が予定されており、通報者の保護や企業の責任が一層強化されることになります。

    しかし、「具体的に何をすれば法改正に対応できるのか」「制度が形骸化しないためにはどう運用すればよいのか」といった悩みを抱える担当者の方も多いのではないでしょうか。

    本記事では、2022年施行の改正法の基本と、2025年に成立した新たな改正法による更新内容を統合的に解説します。法務担当者や経営者が知っておくべき内部通報制度の設計・運用の実務を、具体的なステップに沿って解説します。法令遵守はもちろんのこと、企業価値を守り、向上させるためのコンプライアンス体制構築の一助となれば幸いです。

    内部通報制度とは、組織内の法令違反や不正行為を早期に発見し、是正するために、従業員等が組織内の専門窓口に通報できる仕組みのことです。企業の自浄作用を促し、大きな不祥事やレピュテーションリスクを未然に防ぐことを主な目的としています。この制度の根幹をなすのが「公益通報者保護法」です。

    Contents

    そもそも内部通報制度の目的とは?

    内部通報制度の目的は、単に不正を発見するだけではありません。主に以下の3つの重要な役割を担っています。

    • リスクの早期発見と是正: 外部への告発やマスコミへのリークといった形で問題が表面化する前に、内部で問題を把握し、迅速に対応することで損害を最小限に抑えます。
    • コンプライアンス意識の向上: 制度が適切に運用されていることを示すことで、従業員の法令遵守に対する意識を高め、不正行為の抑止力として機能します。
    • 企業価値の維持・向上: 実効性のある内部通報制度は、健全なコーポレートガバナンスの証です。投資家や取引先、社会からの信頼を高め、企業価値の向上に繋がります。

    法律で義務化されたから対応する、というだけじゃなくて、会社を守るための重要な仕組みなんだな。

    改正公益通報者保護法の重要ポイント

    【2022年6月施行】改正法の3つのポイント

    2022年(令和4年)6月1日に施行された改正法は、内部通報制度の実効性を高めるため、事業者にこれまで以上の対応を求めるものとなりました。特に重要な変更点は以下の3つです。

    (【img1】改正公益通報者保護法 ポイント図解のイメージ)

    1. 体制整備の義務化(従業員300人超)
      これまで努力義務だった内部通報制度の体制整備が、常時使用する労働者数が300人を超える事業者に対して法的に義務付けられました(公益通報者保護法 第11条)。
    2. 公益通報対応業務従事者の指定と守秘義務
      通報の受付や調査を行う「公益通報対応業務従事者」を定めることが義務化され、この従事者には法的な守秘義務が課されました。違反した場合は罰則(30万円以下の罰金)の対象となります(公益通報者保護法 第12条)。
    3. 保護される通報者の範囲拡大
      法律で保護される通報者の範囲が、正社員だけでなく、パート・アルバイト、派遣労働者に加え、退職後1年以内の元従業員や役員にまで拡大されました。

    【2026年施行予定】さらなる改正法による罰則強化と新規制

    2025年6月に成立した改正法(2026年中に施行予定)では、制度の実効性をさらに高めるため、以下の点が強化されます。

    1. 通報妨害行為の明文禁止
      事業者が通報を妨害する行為や、通報者を探す行為(探索行為)が明確に禁止されます。これは、EU通報者保護指令など、国際的な基準に対応するものです。
    2. 罰則の大幅強化
      体制整備に関する国の是正命令に従わない場合、法人に対して罰金が科される可能性があるなど、罰則が大幅に強化され、従来の行政指導・勧告から、より強い執行手段に移行します。
    3. 保護対象者のさらなる拡大
      保護される通報者の範囲が、フリーランスや業務委託先の従業員など、企業の従業員以外の利害関係者にも拡大される予定です。

    「公益通報」と「内部告発」「ハラスメント相談」の違い

    ここで、似た言葉との違いを整理しておくことが重要です。

    • 定義の明確化:
      • 公益通報: 公益通報者保護法に定められた要件(誰が、どこへ、何を)を満たす通報のこと。解雇の無効など、法律による保護の対象となります。
      • 内部告発: 法律用語ではなく、「組織内部の人間が、その組織の不正や悪事を外部に通報すること」を指す一般的な言葉です。ネガティブな文脈で使われることもあり、すべての内部告発が法的に保護される「公益通報」に該当するわけではありません。
      • ハラスメント相談: 主に労働施策総合推進法(パワハラ防止法)に基づき設置される相談窓口への通報です。公益通報の対象となる法令違反と重なる場合もありますが、対象範囲や根拠法が異なります。
    • 区別のポイント:
      法律で保護される「公益通報」となるためには、通報内容が特定の法律に違反する事実(通報対象事実)である必要があります(公益通報者保護法 第2条)。単なる社内規程違反や個人的な不満は、原則として公益通報には当たりません。

    なるほど、社内で起きた問題のすべてが「公益通報」になるわけではないんですね。でも、企業としてはハラスメントなども含めて広く受け付ける体制が必要になりそう。

    企業としては、これらを区別しつつも、ハラスメント相談なども含めて広く情報を吸い上げ、適切に対応できる体制を整えることが、リスク管理の観点から望ましいと言えます。

    【義務】従業員300人を超える事業者が講ずべき4つの体制整備措置

    改正公益通報者保護法第11条では、常時使用する労働者数が300人を超える事業者に対し、内部通報制度に関する体制整備を義務付けています。消費者庁が公表している「公益通報者保護法に基づく指針」(令和3年内閣府告示第118号)では、具体的に以下の4つの措置を講じる必要があるとされています。

    ① 内部公益通報対応体制の整備(窓口設置・一元管理)

    通報を受け付け、調査し、是正措置を行うための一連の体制を整備する義務です。

    • やるべきこと(例):
      • 内部通報の受付窓口(例:コンプライアンス部門、人事部門、監査役など)を設置する。
      • 社内だけでなく、弁護士事務所などの中立的な外部窓口を併設することも有効。
      • 通報された情報を関係部署で共有し、組織として一体的に対応する仕組みを構築する。

    ② 公益通報対応業務従事者の指定と守秘義務

    内部通報の対応業務を行う「公益通報対応業務従事者」を規程などで正式に指定することが求められます。

    • 従事者の役割と義務:
      • 従事者は、通報の受付や調査、是正措置の実施などを担当します。
      • 正当な理由なく、通報者を特定させる情報を漏らしてはならないという法的守秘義務を負います(公益通報者保護法 第12条)。
      • この守秘義務に違反した場合、30万円以下の罰金という刑事罰が科される可能性があります。

    この「従事者」は、単なる担当者とは異なり、法的な重い責任を負う立場であることを明確に認識する必要があります。関連して、通報者の個人情報管理も重要になるため、個人情報保護法の基本と企業が対応すべき事項についても理解を深めておくと良いでしょう。

    ③ 通報者を保護するための措置(不利益な取扱いの禁止)

    通報者が安心して制度を利用できるよう、通報したことを理由とするいかなる不利益な取扱いも禁止し、その実効性を確保する措置を講じなければなりません。

    • やるべきこと(例):
      • 就業規則や内部規程に、公益通報を理由とした解雇、降格、減給、嫌がらせ等の不利益な取扱いを禁止する旨を明記する。
      • 通報者の探索行為を禁止し、違反者には懲戒処分を科すことを周知する。
      • 調査過程で協力した従業員に対しても、同様に不利益な取扱いをしないことを明確にする。

    ④ 制度の実効性を確保するための措置(周知・教育など)

    制度を設けるだけでなく、それが実際に機能するための措置も義務付けられています。

    • やるべきこと(例):
      • 内部通報制度の存在、利用方法、保護内容について、社内イントラネットへの掲載やポスター掲示などで全従業員に周知する。
      • 定期的にコンプライアンス研修を実施し、制度の意義や利用方法を教育する。
      • 通報対応の状況について、通報者を特定しない形で定期的にフィードバックや開示を行う。
      • 制度の運用状況を定期的に評価し、必要に応じて見直し(PDCAサイクル)を行う。

    (事業者が講ずべき措置)
    第十一条 公益通報対応業務(…)を行う事業者は、…公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとらなければならない。

    【根拠】公益通報者保護法 第11条第1項

    これらの措置は、常時使用する労働者数が300人を超える事業者に対する法律上の義務です。企業の規模や業種に応じて、より実効性の高い仕組みを構築していくことが求められます。

    内部通報窓口の設置方法|内部窓口と外部委託の比較と選び方

    内部通報窓口の設置には、自社内に設ける「内部窓口」と、弁護士事務所などに委託する「外部窓口」の2つの選択肢があります。両者を併設する企業も多く、それぞれのメリット・デメリットを理解して自社に合った形を選ぶことが重要です。

    内部窓口(自社設置)のメリット・デメリット

    社内のコンプライアンス部門や人事部門などが担当するケースです。

    • メリット:
      • 社内事情に精通しているため、迅速な事実確認や調査が可能。
      • 是正措置に繋がりやすく、社内にノウハウが蓄積される。
      • 外部委託に比べてコストを低く抑えられる場合がある。
    • デメリット:
      • 通報者が「身内」に相談することになるため、情報漏洩や報復を恐れて通報をためらう可能性がある(心理的安全性の低下)。
      • 担当者の人間関係などから、調査の中立性・公平性が疑われるリスクがある。

    外部委託窓口(弁護士事務所など)のメリット・デメリット

    法律事務所や専門の調査会社に窓口業務を委託するケースです。

    • メリット:
      • 第三者機関であるため、中立性・公平性が担保され、従業員が安心して通報しやすい。
      • 高い専門性に基づき、法的な論点整理や適切な調査プロセスを期待できる。
      • 経営幹部が関与するような重大な事案にも対応しやすい。
    • デメリット:
      • 社内事情に疎いため、初動調査に時間がかかることがある。
      • 導入・運用にコストがかかる。
      • 委託先との連携が不十分だと、形式的な対応に終わり、社内にノウハウが蓄積されにくい。

    ⚠️ 外部委託先選定時の法的注意事項

    外部窓口に委託する際は、以下の点に留意してください。

    • 弁護士法との関係(非弁行為リスク)
      法令違反の有無を判断する「法的助言」を伴う調査は、原則として弁護士資格のある者のみが業として行えます(弁護士法第72条)。弁護士資格のない事業者が法的判断まで行うと、非弁行為に該当するリスクがあります。弁護士事務所への委託であれば、守秘義務(弁護士法第23条)が法的に保証される点でも安心です。
    • 推奨される体制
      「受付代行+事実聴取」を外部に委託し、「法令違反の最終判断」は企業のコンプライアンス部門または顧問弁護士が行うなど、役割分担を明確にすることが重要です。

    【比較表】どちらを選ぶべき?自社に合った窓口の選定ポイント

    (注:以下の比較表は、一部の閲覧環境では画像として表示されます)

    比較項目内部窓口外部委託窓口
    匿名性・中立性△ 確保に工夫が必要◎ 高い
    迅速性・情報共有◎ 容易△ 連携が必要
    導入・運用コスト〇 低い傾向△ 高い傾向
    社内ノウハウ蓄積◎ 蓄積されやすい△ 意識的な連携が必要
    専門性(法務・調査)△ 担当者による◎ 高い
    従業員の心理的安全性△ 懸念あり〇 高い傾向

    選定のポイント

    • 併設が理想: 多くの企業では、内部窓口と外部窓口の両方を設置することが推奨されています。従業員が事案の内容や自身の状況に応じて通報先を選べるようにすることで、制度の利用促進に繋がります。
    • 外部委託先の選定: 外部委託先を選ぶ際は、コストだけでなく、実績や専門性、特に前述の非弁行為リスクを十分に考慮する必要があります。

    自社の状況に合わせて最適な窓口を設計することが、実効性のある制度の第一歩となります。

    形骸化させない!実効性のある内部通報制度の運用ポイント

    制度を構築しても、利用されなければ意味がありません。「誰も使わない」「通報しても何も変わらない」といった形骸化を防ぐためには、継続的な運用努力が不可欠です。

    (【img2】内部通報制度の対応フローチャートのイメージ)

    Step1: 経営トップによるコミットメントの発信

    制度の実効性を担保する上で最も重要なのは、経営トップの強い意志です。

    • 社長や役員が、年頭の挨拶や社内報などで「不正は決して許さない」「通報者を断固として守る」という明確なメッセージを繰り返し発信することが重要です。
    • このメッセージが、制度に対する従業員の信頼の基礎となります。

    Step2: 周知・教育による「心理的安全性」の醸成

    従業員が「通報しても不利益を被らない」と確信できなければ、制度は機能しません。

    • 周知の徹底: 制度の目的、利用方法、保護される内容などを、入社時研修や定期的なeラーNING、ポスターなどで繰り返し周知します。
    • 成功事例の共有: 通報によって問題が是正された事例(個人が特定されない範囲で)を共有することで、「通報すれば会社は動いてくれる」という成功体験を組織全体に浸透させます。

    Step3: 公正・中立な調査プロセスと被通報者の権利保護

    通報を受け付けた後の調査プロセスは、制度の信頼性を左右します。適正な手続きを遵守することが極めて重要です。

    • 迅速な初期対応: 通報を受け付けたら、速やかに受理した旨を(匿名でなければ)通報者に通知します。
    • 中立性の確保: 調査チームには、通報事案と利害関係のないメンバーを選任します。
    • 被通報者の権利保護: 通報者保護と同様に、被通報者(調査対象者)の人権やプライバシーにも最大限配慮が必要です
      • 調査開始時には、決めつけをせず、被通報者に対して通報の概要を伝え、弁明の機会を十分に与えます
      • 調査結果の最終判断までは、「推定無罪」の原則を尊重します。
      • 仮に、調査の結果、不正の事実がなかったと判明した場合は、その旨を本人に通知し、必要に応じて名誉回復措置を講じます。

    Step4: 通報者への適切なフィードバックと是正措置の実行

    調査結果をうやむやにせず、誠実に対応する姿勢が求められます。

    • フィードバック: 調査の進捗や結果、講じた是正措置について、守秘義務に反しない範囲で通報者にフィードバックします。これにより、「通報して良かった」という納得感に繋がります。
    • 是正措置と再発防止: 不正行為が事実であった場合は、厳正な処分を行うとともに、同様の問題が再発しないための具体的な防止策を策定し、実行します。

    これらのステップを地道に繰り返すことが、組織にコンプライアンス文化を根付かせ、内部通報制度を真に機能させる鍵となります。これは、企業の危機管理やレピュテーションリスク対策としても非常に重要です。

    【努力義務】従業員300人以下の事業者が取り組むべきこと

    常時使用する労働者数が300人以下の事業者については、体制整備は「努力義務」とされています。しかし、法的な義務がないからといって、何もしなくて良いわけではありません。

    なぜ努力義務でも体制整備が重要なのか?

    中小企業においても、内部通報制度を整備するメリットは大きいものがあります。

    • リスク管理: 企業の規模に関わらず、不正や法令違反のリスクは存在します。問題が大きくなる前に早期発見できる仕組みは、経営の安定に不可欠です。
    • 人材の定着: 健全な職場環境を維持する姿勢を示すことは、従業員のエンゲージメントを高め、優秀な人材の確保・定着に繋がります。
    • 取引先からの信頼: サプライチェーン全体でコンプライアンスが重視される現代において、適切な内部通報制度の有無が取引先からの信用を左右することもあります。

    小規模事業者でも実現可能な3つのステップ

    大規模な体制は難しくても、以下のようなステップで現実的な仕組みを構築することが可能です。

    1. 簡単な内部規程の作成: 内部通報の目的、窓口、通報者の保護などを定めたシンプルな規程を作成し、全従業員に周知します。
    2. 信頼できる担当者の指定: 経営者や信頼できる管理職を相談窓口として明確に指定します。その際、守秘義務の重要性を十分に理解してもらうことが重要です。
    3. 安価な外部窓口の活用: 自社での対応が難しい場合は、地域の弁護士会や中小企業向けの安価な外部窓口サービスを利用することも有効な選択肢です。

    努力義務でも、やっておくに越したことはないんですね。まずは簡単な規程作りから始めてみようかな。

    Q&A|内部通報制度のよくある質問

    Q. 「常時使用する労働者」にはパートやアルバイト、派遣労働者も含まれますか?

    A. パートタイマー、アルバイト、契約社員は含まれます。ただし、派遣労働者は派遣元の事業者でカウントされます。
    「常時使用する労働者」は、雇用契約の形式を問わず、常態として使用している労働者を指します。したがって、自社で直接雇用しているパートタイマー等は人数に含まれます。一方、派遣労働者は派遣会社(派遣元)が雇用主であるため、派遣先企業の労働者数には通常算入しません。

    Q. 匿名での通報は受け付ける必要がありますか?

    A. 法律上の義務ではありませんが、受け付けることが強く推奨されています。
    消費者庁の指針では、通報者の保護を徹底する観点から、氏名を明らかにしない匿名での通報も受け付けることが望ましいとされています。匿名通報を受け付けない場合、報復を恐れる従業員が通報をためらい、制度が形骸化する一因となる可能性があります。

    Q. 通報対象となる「法令違反」には何が含まれますか?

    A. 公益通報者保護法では、国民の生命や財産などを保護するための対象法律(約500本)が定められています。
    具体的には、刑法(贈収賄、横領など)、食品表示法、金融商品取引法、独占禁止法、個人情報保護法などに違反する行為が含まれます。重要なのは、単なる社内規程の違反や、上司との人間関係といった個人的なトラブルは、原則としてこの法律の保護対象とはならない点です。

    Q. 調査の過程で、被通報者のプライバシーはどう守られますか?

    A. 調査は必要最小限の関係者で行い、被通報者の名誉やプライバシーを不当に侵害しないよう最大限配慮することが求められます。
    調査を行う際は、被通報者にも弁明の機会を必ず与える必要があります。また、調査関係者には厳格な守秘義務が課され、調査内容が不必要に広まらないように管理されます。通報者の保護と同時に、公正な調査手続きを通じて被通報者の権利を守ることも、制度の信頼性確保のために不可欠です。

    まとめ|実効性のある内部通報制度は企業価値向上の土台

    本記事では、改正公益通報者保護法の内容を踏まえ、企業に求められる内部通報制度の設計と運用のポイントを解説しました。

    • 法改正の核心: 従業員300人を超える事業者には、窓口設置や従事者の指定を含む体制整備が法的に義務化されています。
    • 制度設計の鍵: 内部窓口と外部窓口のメリット・デメリットを理解し、自社に合った窓口を設置することが重要です。非弁行為リスクにも注意が必要です。
    • 運用の要諦: 制度の形骸化を防ぐには、経営トップのコミットメント、継続的な周知・教育、そして公正な調査と誠実なフィードバックといった実効性を確保するための運用が不可欠です。
    • 中小企業の対応: 300人以下の事業者も努力義務として体制整備に取り組むことが、リスク管理と企業信用の観点から強く推奨されます。
    • 将来の法改正: 2025年6月にさらなる改正法が成立しており、2026年中に罰則の強化などが施行される予定です。最新の動向にも注意が必要です。

    内部通報制度は、単なる法令遵守のための「守り」のツールではありません。組織の不正を自ら浄化し、健全な企業文化を醸成することで、社会からの信頼を獲得し、持続的な成長を遂げるための「攻め」の基盤となるものです。この機会に、自社の内部通報制度が真に機能しているか、改めて見直してみてはいかがでしょうか。


    免責事項

    本記事は、内部通報制度に関する一般的な情報提供を目的とするものであり、特定の事案に対する法的アドバイスを提供するものではありません。個別の事案については、必ず弁護士等の専門家にご相談ください。本記事に掲載された情報に基づきなされた判断により生じたいかなる損害についても、当方は一切の責任を負いません。法令・制度は執筆時点(2025年10月)のものであり、最新の改正状況にご注意ください。


    参考資料



    植野洋平弁護士(第二東京弁護士会)
     検察庁やベンチャー企業を経て2018年より上場企業で勤務し、法務部長・IR部長やコーポレート本部の責任者を経て、2023年より執行役員として広報・IR・コーポレートブランディング含めたグループコーポレートを管掌。並行して、今までの経験を活かし法務を中心に企業の課題を解決したいと考え、2021年に植野法律事務所を開所。

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