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    秘密保持契約書(NDA)とは、ビジネス上でやり取りされる重要な情報やノウハウが外部に漏れないよう、情報の取り扱いルールを定める契約を指します。
    この記事では、秘密保持契約書の基本的な構成要素から具体的な作成の流れわかりやすく解説していきます。

    秘密保持契約書の目的と役割

    秘密保持契約書は、ビジネスにおいて交換される情報を第三者や競合他社へ漏えいさせられることを防ぐために締結されます。秘密保持契約書を締結することで、秘密情報漏えいの抑止力となるほか、万が一漏えいした際の損害賠償の根拠づけをすることができます。

    秘密保持契約書が必要となるシーンとタイミング

    最も多いのは企業間の取引や共同研究・開発時における情報交換の場面です。
    秘密保持契約書の締結は、秘密情報のやり取りが発生する前に行うようにしましょう。

    また雇用契約時や従業員の入社時、退社時にも、従業員との間でNDAが活用されます。後から機密保持の必要性に気付いた場合は速やかに取り交わし、情報漏えいを最小限に抑えるよう対応を行うことが重要です。

    秘密保持契約(NDA)の条項

    秘密保持契約(NDA)の主な条項
    目的
    秘密情報の定義・適用除外
    秘密保持義務
    目的外使用の禁止
    秘密情報の返還・破棄
    損害賠償
    有効期限・存続条項

    目的

    締結の目的は多岐にわたりますが、例えばM&Aの場合と単発の簡易な取引の場合では状況が異なるため、その秘密保持の範囲や、有効期間等において内容に違いが生じます。そのため、秘密保持契約書を締結する目的はあらかじめ明確にしておきましょう。

    「2社間の協業検討を目的に、、」と一口に書かれていることもありますが、念のため具体的な内容を確認した方が良いでしょう。

    秘密情報の定義

    NDAの作成において最も重要ともいえるのが、秘密情報の定義です秘密情報を適切に定義しなければ、仮に情報漏えいが発生しても被害内容を特定できず、損害賠償請求が困難になることがあります。
    秘密情報を包括的に定義するか、限定的に定義するかを検討する必要がありますが、それには自身が秘密情報を開示する方が多いか、受領する方が多いかを明らかにしておく必要があります。自身が秘密情報を開示する場合では、「これらを含む一切の情報」と包括的に記載する方が秘密が守られやすい一方で、自身が秘密情報を受領する場合では、特定の情報を列挙するなど、限定的に定義する方が万が一の漏えい時にリスクを回避しやすいでしょう。

    秘密情報の適用除外

    一般的に、既に公知である情報や受領前から自社が保有していた情報は秘密情報から除外される場合が多いです。また、相手方から送付された情報でも、あらかじめ公開されている事実や法律上の開示義務がある場合は対象外とされることがあります。これらの除外要件を明示することで、過剰な制限を避け円滑に情報を扱えるよう工夫が必要です。

    記載例 開示側
    (秘密情報の定義)
    本契約において秘密情報とは、媒体及び手段の如何を問わず、開示者が受領者に開示、提供した、又は将来において開示、提供される技術、営業、人事、財務、組織その他の事項に関する一切の情報を意味する。

    記載例 受領側
    (秘密情報の定義)
    1 本契約において秘密情報とは、開示者から「秘密」である旨明示されて開示を受けた経営上、技術上、営業上その他の情報をいう。ただし、当該情報が口頭又は視覚的手段により開示された場合は、開示者が開示の際に「秘密」である旨を説明し、開示後1週間以内以内に書面により開示した内容を特定したものをいう。
    2 前項の規定にかかわらず、次の各号に定める情報は秘密情報には含まれない。
     (1) 開示を受けた又は知得した時点で、受領者が正当に保有していた情報
     (2) 開示を受けた又は知得した時点で、公知であった情報
     (3) 開示を受けた又は知得した後に、受領者の責めに帰すべき事由なくして公知となった情報
     (4) 正当な権利を有する第三者から秘密保持義務を負うことなく適法に開示を受けた情報
     (5) 開示者の秘密情報を利用することなく、独自に開発した情報

    秘密保持の条文は、秘密保持義務や、秘密情報にアクセスできる人の範囲を定めるなど、最も重要な条文の一つです。
    開示側は受領側に対して、「秘密情報が開示される範囲を限定したい」と考える一方で、受領側は「秘密情報を受領できる範囲を広げたい」と考えるのが一般的です。
    以下に記載例を示します。

    記載例 開示側
    (秘密保持)
    受領者は、善良な管理者の注意をもって、開示者の秘密情報を厳に秘密として管理し、滅失、毀損、漏えい等の発生を防止しなければなければならない。

    記載例 受領側
    (秘密保持)
    1 受領者は、善良な管理者の注意をもって、開示者の秘密情報を厳に秘密として管理し、滅失、毀損、漏えい等の発生を防止しなければなければならない。
    2 受領者は、自己又は自己の関係会社の役員、執行役員及び従業員(派遣社員を含む。)に対し、本件に関わる業務のために必要最小限の範囲で開示者の秘密情報を開示することができる。この場合、受領者は、本契約に基づいて自己が負う秘密保持義務と同等の義務をこれらの者に課すとともに、その遵守について責任を負う。
    3 受領者は、弁護士、公認会計士、税理士、弁理士等、法令により職務上の守秘義務を負う者及び取引先金融機関に対し、必要最小限の範囲で開示者の秘密情報を開示することができる。

    目的外使用の禁止

    開示された情報を明示された目的以外に使用してはならないと定めておくこと目的外使用の禁止)は、NDAを締結するうえで最も重要な条項の一つであるため、忘れないようにしましょう。これにより、情報を取得した当事者が本来の契約目的と無関係な活動に流用するリスクを防ぐことができます。

    複製や共有のルール

    秘密情報をコピーする場合や社内外で共有する場合、必要最小限にとどめる取り扱い基準を定めることが重要です。開示側の場合、複製を禁止する場合もあります。

    返還・破棄に関する規定

    NDAの終了や契約目的が達成された際に、開示された情報の返還や破棄の義務を根拠づける条文です。具体的には、サーバー上のデータの完全削除や、紙媒体の適切な廃棄方法など、実務的な観点を踏まえた管理ルールを策定しましょう。また、受領側としては義務が課される形になりますので、ない方が望ましいと考えられます。

    記載例 開示側
    (秘密情報の返還等)
    1 受領者は、本契約終了後または開示者から要求があった場合は、その要求に応じ、速やかに開示者の秘密情報(複製物及び複写物を含む。)を返還若しくは廃棄し、又は記録媒体から削除する。
    2 受領者は、前項に基づく受領者の義務が履行されたことを証明する書面を甲に対して提出する。

    契約の有効期間と存続条項

    NDAの有効期間をいつまでとするかは、契約内容の性質によって変わります。多くの場合、事業が終わるまでや1~3年の一定期間を設定して締結し、一部条項については契約終了後も一定期間、義務が継続するように規定します。

    記載例 開示側
    (有効期間)
    1 本契約の契約期間は受領者は、本契約締結日から3年間有効とする。
    2 前項の規定にかかわらず、本契約終了後も本条、第〇条(秘密保持義務)、第〇条(損害賠償)、本条、及び第〇条(準拠法・合意管轄)は期間を定めず引き続き有効に存続する。

    記載例 受領側
    (有効期間)
    1 本契約の契約期間は受領者は、本契約締結日から1年間有効とする。
    2 本契約の終了事由にかかわらず、本契約終了後も第〇条(秘密保持義務)については1年間、本条、第〇条(秘密保持義務)、第〇条(損害賠償)、本条、及び第〇条(準拠法・合意管轄)は期間を定めず引き続き有効に存続する。

    違反時の損害賠償・罰則規定

    秘密保持義務違反が起きた場合の罰則について根拠づける条文です。
    開示側は「可能な限り賠償してほしい」と考える一方で、受領側は「賠償の範囲をできるだけ限定したい」と考えるのが通常です。以下に記載例を示します。

    記載例 開示側
    (損害賠償)
    開示者は、受領者による本契約の違反に起因又は関連して被った通常損害及び特別損害(逸失利益、弁護士費用その他の訴訟関連費用を含む。)の賠償を受領者に請求することができる。

    記載例 受領側
    (損害賠償)
    各当事者は、相手方が故意又は過失により本契約に違反した場合、相手方に対し、当該違反により被った相当因果関係のある損害(逸失利益を含まない。)の賠償を請求することができる。

    秘密保持契約書(NDA)は印紙が必要か?

    一般的に、契約書であっても、単なる秘密保持契約書には印紙は必要ありません。印紙税は国税庁が定める課税文書に該当する場合のみ課税対象となり(第1号文書から第20号文書まで20種類)、多くの場合は金銭の支払いに関する契約や領収書などが該当し、秘密保持契約書は該当しません。
    ただし、秘密保持契約書の内容に金銭の支払いに関する取り決めが含まれている場合には、印紙税が発生する可能性があります。具体的な運用や判断は契約の実態に従うため、気になる場合は税理士や専門家に確認することをおすすめします。

    秘密保持契約書(NDA)作成の流れ

    NDAの作成は、雛形(ドラフト)の準備から始まります。自社の業務特性や守りたい情報の種類を洗い出し、それに合わせて雛形をカスタマイズしていくことが大切です。

    ドラフト
    まずは一般的なNDAの雛形を用意し、自社が取り扱う機密情報や事業形態に合わせて修正を加えます。また、ひな形は開示する側、受領する側、双方向のそれぞれのパターンで用意しておくと便利です。自社だけで対応が難しい場合は、弁護士や社内の法務担当に相談することで、必要な条項を漏れなく盛り込むことができます。
    相手方との協議・修正
    ドラフトが完成したら、相手方と秘密情報の定義や違反時の責任など細部を擦り合わせます。お互いの利害やリスクを十分考慮したうえで、双方が納得できるバランスのとれた契約条項に仕上げることが重要です。
    ❸締結と保管
    最終的な内容に合意したら、当事者が署名捺印し、互いに契約書の原本を保管します。後日のトラブル防止のためにも、電子データ化による保管も併用しておくと、参照や検索がしやすくなるためおすすめです。

    秘密保持契約書(NDA)は電子契約できる

    秘密保持契約書は電子契約で締結することができます。
    近年では、ペーパーレス化やリモートワークの普及に伴い、NDAを電子契約で締結する企業が増えています。各社が提供している電子契約サービスを利用して署名とタイプスタンプを付与することで、紙と同様の効力を持たせることができます。
    電子契約システムを導入することで書類の印刷・郵送が不要となり、スピーディかつ効率的に契約手続きを行えるのが大きなメリットです。
    相手方の合意も得たうえで導入を検討してみましょう。

    個人情報保護法との関係

    開示する情報に個人情報が含まれる場合は、本人の同意取得や取り扱い目的の明示など、個人情報保護法が適用される点を踏まえた条項を盛り込むことが求められます。守られるべき情報が人権やプライバシーにかかわるため、管理の徹底が重要です。
    また、プライバシーマークを取得している企業などは、独自のガイドラインや運用マニュアルを設けている場合が多いため、NDAにもそれらに沿った管理体制を適用すると効果的です。双方が納得し合いながら、情報管理のルールを明確に共有しましょう。

    まとめ・総括

    秘密保持契約書(NDA)は、企業や個人が安心して機密性の高い情報をやり取りし、ビジネスを円滑に進めるための重要な仕組みです。特に、情報化社会の中でサービスや技術を保護するうえで、その存在意義はますます高まっています。

    NDAを活用する際には、契約書に記載する内容が自社のビジネス環境や情報管理体制に合うかを常に確認し、定期的に見直すことが大切です。適切に作成・運用されたNDAは、企業の信頼性を高めると同時に、リスク回避の観点でも大きな役割を果たします。

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